なるほど健康メモ

がんの緩和医療について(2009年2月号)

 緩和医療という言葉から死の訪れを安らかに受け入れるイメージを持つや、終末医療(ターミナルケア)と混同されている方もいると思います。
 2006年に国会でがん対策基本法が制定され、この法案の骨子に、国民は全国どこでも標準治療を受けることおよび緩和医療の充実があります。
 癌(がん)治療の現在の中心は外科手術、化学療法、放射線治療の3本柱があり、癌の進行度にあわせて標準的方法が推奨されています。

 一方、癌治療の早期から緩和医療を併用することは、決して治療を放棄することではなく、癌治療に随伴する疼痛(とうつう)をはじめとする身体症状(呼吸困難、消化器症状、浮腫など)や不安、気持ちの辛さなどの精神症状の緩和も患者のQOL(生活の質)の向上に寄与するものです。

 具体的政策として全国の各地方に癌拠点病院を数カ所作り、地域医療との連携を図っていく方針から北海道には現在10カ所の拠点病院があり、オホーツク地方では北見赤十字病院が指定されています。

 日赤病院内での緩和医療の取り組みとしては緩和ケアチームを医師、看護師、臨床心理士、リハビリ士、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーの多職種で作り、依頼ケースへの介入や相談窓口対応、症例検討会や勉強会を院内外で定期的に開催し、知識や技術の向上維持を目指しています。
 緩和医療の充実のためには施設や環境のハード面のほか、患者家族も含め直接かかわるすべての人のソフト面の共有作業も重要なことです。

 癌患者の増加が予想される今日、末期癌や進行癌に罹患し治療の行き場をなくす「癌難民」を作らないためにも、ますます緩和医療の充実は重要といえます。