なるほど健康メモ

アニサキス症(2009年4月号)

「夕食に新鮮な刺身を堪能して気持ち良く寝ていたら、夜中に胃に激痛が走った」「熱もないし下痢もないけれど、腹痛で一晩七転八倒し翌朝病院へ来た」。

 こんなとき、医者は胃カメラを勧めます。
すると、赤く腫れた胃の壁に0.5mm×10mmの細くて白い線虫が噛み付いていることがあります。胃カメラのライトから逃げ回るのを首尾よく摘まみ上げて回収すると、鎮痛剤も効かなかった腹痛がみるみるうちに治まっていきます。これがアニサキス症です。

 この虫は、北海道岩内町の開業医だった石倉肇(はじめ)先生によって世界で初めて報告されました。イカ、ニシン、サバ、サケ、アンコウなどさまざまな魚の生食で感染します。ヒトからヒトに移った例はありません。時間が経つにつれて虫は腸に流れて行き、ほぼ1週間から10日前後で死滅し排泄されるようです。

 ただ、腸に流れて行くと内視鏡で取り除くのは難しくなり、絶対に効くという駆虫薬もありませんので、痛みが無くなったからといって放置してはいけません。
 稀に小腸や大腸に虫が喰いついてしまい、俳優の森繁久彌さんのように緊急手術になる例もあります。
 また、症状がなくても大腸に住み着いている虫が偶然見つかることもありますので、胃が痛いうちにすぐ受診することをお勧めします。

 この虫は食酢では死にません。50℃では数秒で死滅し、マイナス10℃でも1日で死にます。最後の予防手段は、新鮮な魚の刺身を食べるときはよく見る!よく噛む!ですが、それでは美味しさ半減なのが難点です。