なるほど健康メモ

健康診断にみる性差の問題点(2009年6月号)

定検診が導入されてから、いわゆるメタボリックシンドロームに焦点が当てられ、検査内容・基準も以前とは若干異なっています。
女性の場合は閉経するとコレステロール値が上昇し、中性脂肪も増えてきます。平均すると常に男性より高いという状態です。

 これらの値が高いと、動脈硬化を起こしやすく心疾患・脳卒中などの循環器疾患のリスクが高まるということで要注意となりますが、本当に関連があるのでしょうか。
いくつかの興味あるデータがあります。大阪の健康センターでの調査では、男性の場合確かにコレステロール値が高くなるほど心筋梗塞が増えるのですが、女性の場合、ほとんど変わりがありませんでした。

 また、熊本の医師らによる心筋梗塞を発症した危険因子の調査では、女性の場合、喫煙が最大の危険因子で、次いで糖尿病、高血圧、家族歴の順となり、高コレステロール血症は関係なしという結果が出ています。

 厚労省の「冠動脈疾患による10年死亡の確率」という調査でも、男性が加齢はもとより喫煙も糖尿病も高血圧も、そしてコレステロールも確率を上げるのに対し、女性においては、加齢、喫煙、糖尿病は影響するが、コレステロールは全く関係ないという結果でした。これらのデータをみる限り女性の場合、更年期以降にコレステロールや中性脂肪の値が多少高くなっても、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす危険性は低いということになります。

 健診の判断基準の多くは平均的な男性のものであり、コレステロールや中性脂肪の問題は氷山の一角に過ぎません。
過剰な医療を避けるためにも、女性特有の疾病を見逃さないためにも、性差を考慮した判断基準が作られるべきかもしれません。