なるほど健康メモ

かぜ症候群とは(2009年8月号)

症候群とは、いくつかの徴候や症状がまとまって連続的に現れる病像の呼称ですが、かぜ症候群は、日常診療の場において、ありふれた疾患であり、年間一人当たりの平均罹患(りかん)回数は5~6回といわれています。

古くから「かぜは万病の元」といわれながらも軽く見られがちです。かぜは症状が悪化すると不愉快な状態が続くだけでなく二次的に色々な疾患を併発させ、時に重篤(じゅうとく)な状態に陥(おちい)ることもあるので、乳幼児や高齢者をはじめ基礎疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。

 また、かぜ症候群の病原微生物は主にウイルスで、ライノウイルス、コクサッキーウイルスなど、その種類は200種を超えるといわれており乳幼児などは、中耳炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)の併発により発熱が遷延(せんえん)するほか、成人でも難聴や鼻水、鼻づまり、咳が慢性化することがありますので、こうした症状が続く場合には、耳鼻咽喉科などで診察を受けましょう。

かぜの治療というと、総合感冒薬(かぜ薬)を思い浮かべる方が多いと思いますが、インフルエンザウイルスなど、ごく一部を除き、かぜのウイルスを直接退治できる薬は現在のところ存在しません。一般的にいう「かぜ薬」とは、かぜ症候群の発熱や痛み、鼻水などの「症状を抑える薬」のことですので、安静にして睡眠を十分にとることが最も効果的です。

かぜの合併疾患となりやすい細菌性の中耳炎、副鼻腔炎、扁桃炎(へんとうえん) 、肺炎などは、ウイルス性とは異なり、抗生物質が直接細菌を攻撃しますが、日本では医師の診察・処方なしに抗生物質を購入することはできません。

これらの疾患は、症状からかぜ症候群との見分けが難しいため、市販のかぜ薬を飲み続け症状を悪化させる人が後を絶ちません。
たかがかぜひき、されどかぜひき。「かぜは、かぜ薬を飲めば簡単に治る」と安易に考えるのはやめましょう。