なるほど健康メモ

ヘリコバクター・ピロリ 菌 と 胃がんのお話①(2011年1月号)

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は 1983年オーストラリアのロビン・ウォレンと バリー・マーシャルにより発見されました。
胃の内部は、胃酸によって強酸性であるた め、従来は細菌が生息できない環境だと考え られていました。
ピロリ菌は、ウレアーゼと 呼ばれる酵素により胃内にアンモニアを発生 させ局所的に胃酸を中和することによって胃 へ定着(感染)しています。
この菌の発見に より動物の胃に適応して生息する細菌が存在 することが明らかにされました。
発見された当時、慢性胃炎や胃潰瘍は、 もっぱらストレスだけが原因であるという説 が主流でしたが、マーシャルはピロリ菌を自ら飲むという実験を行い、自らが急性胃炎と なり、ピロリ菌が病原体であることを証明し ました。

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その後の研究から、『慢性胃炎や胃・十二指 腸潰瘍患者の胃にピロリ菌が感染しているこ と』や『抗生物質や胃薬を用いたピロリ菌の 除菌治療は再発防止に有効である』ことなど が明らかになりました。
両氏は2005年にノー ベル生理学・医学賞を受賞しています。
ピロリ菌は、胃がんの原因として最近注目 されています。日本では、50~60代の約80% がピロリ菌に感染しているといわれ、そのう ちの80~90%が慢性胃炎に移行し、その10~ 15%が胃がんを発症するといわれています。
ピロリ菌の感染や慢性胃炎を検診等で指摘 された方は、例え自覚症状がなくても胃がん になりやすい状態といえます。精密内視鏡検 査と定期経過観察等が必要ですので、専門医 療機関への受診をお勧めいたします。

北見医師会