なるほど健康メモ

アレルギー大国になった現代日本 (2009年7月号)

近年、アレルギー疾患の患者が目立って増加していることが、数多くの医学会で報告されています。気管支ぜんそく,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎 のいわゆる3大アトピー性疾患の有病率は30%以上 であり、これは日本国民の3分の1は何らかのアレルギー疾患に罹患(りかん)しているという計算になります。

ここ30年で5倍以上に増加したという報告もあり、現在も増加傾向にあるとされています。これらアレルギー疾患はさらに低年齢化して増加の一途をたどりつつあり、今や先進国の国民病になったともいえます。近年の研究によると、現代の清潔な環境が小児のアレルギー性疾患を増加させており、清潔な環境が整わない発展途上国では,現在でもアレルギー性疾患が先進国に比べて極端に低いというデータがあります。

 ある外来診療で子供さんがアレルギー体質であることを説明すると、おじいちゃんやおばあちゃんからは「昔はこんな病気にはめったに、かからなかったものです。今の子は環境が良すぎて体が弱いのですね」との声を聞くことがあります。また、強い子を育てるには、「家庭でわざと汚い環境をつくった方がいいのでは」という考えになるのも無理ありません。

 現代は昔に比べ、乳幼児死亡率が格段に低下していますが、この一番の要因は現代の清潔な環境づくりで衛生状態が良くなり、感染症死亡率が減少したことです。究極の選択である「感染症により乳幼児期に死亡するのとアレルギー疾患に長期間罹患するのと、どちらを選ぶか」を迫られているのです。

 少子化の現代日本では、皆迷わず後者を選択すると思いますが、清潔な環境をつくることができる先進国である以上、このアレルギーとは、今後もうまく付き合っていかなくてはならないようです。