なるほど健康メモ

内視鏡外科手術とは〜② 胸腔鏡手術 (2010年6月号)

胸腔鏡とは,胸の中(胸腔内)の観察を行う内視鏡のことです。そして、胸腔鏡から得られた画像をモニターに映して行う手術を胸腔鏡手術と言います。

 近年は、医療技術や機器の進歩が目覚ましく、胸腔鏡手術の対象となる疾患が拡大され以前から行われていた自然気胸に加え、肺がんや 縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)などでも行われつつあります。

 手術創は、自然気胸であれば、2cmの創3カ所で行います。肺がんであれば、1カ所に4~8cmの創を追加します。これは、切り取った肺などの組織を取り出すために必要です。

 実際の手術は、肺がんの場合は3人で行います。1人が胸腔鏡を操作し、1人はモニター画像を見ながら 剥離(はくり)や切除を行い、もう1人が同じくモニター画像を見ながら 鉗子(かんし)で肺を引っ張ったり持ち上げたりしてサポートします。動脈や静脈、気管支を切り、 病巣(びょうそう)のある肺葉を体外に取り出します。これには、3人の術者の絶妙な連携が求められ、高度な技術が必要になります。そのため、専門医を中心とした経験を積んだチーム医療が必要となります。

 胸腔鏡手術の長所は、手術創が従来の開胸手術に比べ小さいため、術後の痛みが軽減し回復が早く、美容的にも優れています。

 短所として、技術的な難易度が高いため、突然の出血への対応が難しいことや時間が長くなることが挙げられます。

 現在、多くの手術が胸腔鏡で可能ですが、開胸手術の方が安全な場合もあり、症例ごとに手術方法の検討が必要です。