なるほど健康メモ

睡眠時無呼吸症候群(1)

平成15年2月におきたJR山陽新幹線の運転士による居眠り運転事故で世間にひろく知られるようになった睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:以下SAS)。
今月と来月はこの病気についてのお話です。

SASというのは眠っている間に10秒以上の無呼吸が一晩(7時間)に30回以上あるいは1時間に5回以上ある状態をいいます。
多くの場合は肥満が原因で喉の内側についた脂肪によって気道が狭くなっているところに、仰向けで寝ると重力で舌根(ぜっこん)が落ち込み、さらに眠ると喉の周辺の筋肉も緩んで気道が閉塞されて呼吸ができなくなるのです。(ただし日本人は顎が小さいため、やせた人にもかなり多くの患者さんがおり、太っていないからといって安心できません)無呼吸になるたびに血液中の酸素濃度が低下するので「呼吸をしなさい」という指令を出すために脳が目覚めます。
このため深い眠りが得られず何時間眠っても翌日の昼間に強い眠気を覚えてしまうのです。

睡眠時無呼吸症候群

この眠気は強烈で眠ってはいけない場面でも突然意識を失うかのごとく眠ってしまいます。
そのため集中力の低下を招き会議中の居眠り、交通事故(一般の人の5〜7倍という報告もあり)や転落事故などの原因となります。
また血液中の酸素が減るとあらゆる臓器が酸素不足となります。特に脳や心臓への影響は大きく高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などを起こすリスクが高まります。
中等症以上の患者さんでは無治療の場合、9年後の生存率が70%を下回っていたとの報告もあります。

たかがイビキと放っておけない病気なのです。来月は検査や治療についてお話ししたいと思います。