なるほど健康メモ

鼠径(そけい)ヘルニアについて(H29.11月号)

「ヘルニア」とはラテン語で「脱出」という意味があります。整形外科領域の「腰椎ヘルニア」はよく聞くと思いますが「鼠径ヘルニア」はあまり聞きなれない病名と思います。俗に「脱腸」と呼ばれ、比較的よく発症する病気です。足とお腹の境目、足の付け根の部位は立って力を入れると最も腹圧が上がる部位です。この一番力のかかる部位の筋膜が緩んで小腸や大腸が脱出するのが「鼠径ヘルニア」です。立つとふくらみ、横になれば押し込みやすくなります。

「小児鼠径ヘルニア」は先天性の病気で、鼠径部の腹膜が閉じないまま生まれたため発症します。「成人鼠径ヘルニア」は加齢とともに筋膜が緩むことが原因とされています。長年の力仕事や立ち仕事、喘息や便秘による腹圧上昇、さらに妊娠などの負担も発症の要因とされています。

鼠径(そけい)ヘルニアについて(H29.11月号)

「小児鼠径ヘルニア」は自然に治ることもあ
りますが、1歳を過ぎても治らない場合は手術治療が必要です。手術は、成長に伴い筋膜が発達してくるため鼠径部の腹膜を縛ってふさぐだけです。

一方「成人鼠径ヘルニア」は自然治癒することがなく、唯一の治療法は手術です。現在、一般的にはメッシュと呼ばれる網目状の人工シートを緩んだ筋膜の部位にあてて補強します。従来メッシュを入れるためにはより大きな傷が必要でした。近年は腹腔鏡手術と言ってお腹の中に内視鏡を挿入し、テレビモニターに映る映像を見ながら行う手術が成人鼠径ヘルニアにも導入され、小さな傷での手術が可能となりました。