なるほど健康メモ
麻酔の秘密その2(R3.6月号)
先日「全身麻酔はどれくらいで覚めますか?途中で切れることもありますか?」と聞かれました。実はよくある質問です。「手術が短時間で終わっても、長引いても、手術終了後10分くらいで目覚めますので安心して下さい。」とお答えしています。(麻酔)→(局所麻酔を“打つ”)→(1回の注射)のイメージからか、「麻酔は薬を一回注射しておわり。いつ覚めるかまでは調節できない。」とお考えになってる方はけっこういらっしゃいます。
実際の麻酔は「一回注射を打てば終わり。」よりは幾分複雑です。まず、投与しているあいだだけ効くお薬を何種類か持続注射(もしくは吸入)して、前回ご紹介した麻酔の3要素『意識がなく、痛みを感じず、動かない』状態をつくります。そして手術という、時には何時間にもわたる肉体への『攻撃』から、さまざまな合併症や背景を持った患者さんの生命活動を維持するのがわれわれの仕事です。出血に対して適切な点滴をおこなう、場合によっては輸血を選択する、尿量が少ない時に尿を出させる方法を考える等々。いちばん大切なのは呼吸と循環(心臓を中心とした血液の巡り)で、人工呼吸器の設定を調節したり、血圧を上げ下げする多彩なお薬を併用します。
この『肉体への攻撃から患者さんを守るための技術』は、生死を分けるほど重症な病気やけがの診療にそのまま応用できます。そのため北海道では(救急科専従医のいる札幌圏を除く地域では)重症患者さんの診療といえば、麻酔科医が登場する場面が多いです。