なるほど健康メモ

麻酔の秘密その3(R3.7月号)

これまでにご紹介した麻酔の3要素(意識がなく、痛みを感じず、動かない状態)を達成するために使われる薬のうち、意識をとり除く薬と痛みをとり除く薬は、血圧を下げるはたらきか、呼吸を弱めるはたらき、またはその両方を必ずもっています。手術は見方を変えれば『肉体への攻撃』で、麻酔は『防御』と申しましたが、麻酔もまた肉体にとっては負担なのです。ですから事前に『麻酔はとても危険というわけではないが、あたりまえに安全というわけではなくリスクを伴う』という内容の説明を必ずします。

麻酔にリスクがあるということは麻酔が簡単な人と難しい人がいるということです。麻酔科医の心の中に「ちょっとやりずらいな...」という感情が生じても不思議ではありません。全身状態が悪く、一刻を争う緊急手術は確かに難しいに違いありませんが、たいていの場合「なんとかしなければ!」という感情が先立つので「やりずらいな...」とは思いません。

麻酔の秘密その1(R3.5月号)

「やりずらいな...」と思ってしまう『麻酔科泣かせ』の患者さんその1は、タバコを吸い続けて禁煙していない人です。タバコを吸っている人は痰が多く、手術中に頻回な吸引を要したり、術後の肺のふくらみが悪くなり呼吸器合併症が増える傾向があります。その2は高度の肥満を有する患者さんです。背骨の感触が分からず、神経ブロックができないことや、機械を使った人工呼吸の管を気管に入れる手技、そもそも人工呼吸自体が格段に難しくなることがあります。とはいえ、難しくてもしっかりやりますよ!