なるほど健康メモ

高齢者の皮膚(2)(R4.6月号)

高齢者の多くに認められる乾皮症(皮脂欠乏症)は皮膚がわずかに乾燥し、細かい鱗屑(りんせつ、角質がはがれようとしている状態)が付着した状態です。皮膚が乾燥する要因として、生理的要因、環境要因に加えて過度の入浴・脱脂作用の強い洗浄剤の使用・入浴の際のこすり過ぎなどの生活要因が関係しています。乾燥が続き知覚神経が表皮にまで侵入すると、皮膚は刺激に対し過敏な状態になり、衣類との摩擦や体温の上昇などにより容易に痒みが生じます。皮膚の掻破や摩擦によって炎症(皮脂欠乏性湿疹)が起こります。乾燥して細かい鱗屑やごく浅い角層の亀裂が見られる状態から、皮膚に小さなプツプツとした盛り上り(湿疹の始まりの丘疹)が出てきます。症状が悪化すると、丘疹が拡大して円形のジクジクした湿疹病変(貨幣状湿疹)が出現してきます。さらに貨幣状湿疹が悪化すると、その周りから全身の皮膚に湿疹の丘疹が拡大することがあります。この状態が自家感作性皮膚炎で、全身が非常に痒くなり、夜もポリポリ、不眠になります。

高齢者の皮膚

皮膚の乾燥はすねを中心とした下肢、上肢、腰背部によく見られ、皮脂分泌や発汗の多い顔面や間擦部にはあまり見られません。全身の乾燥が強い場合には、糖尿病や腎不全~血液透析が背景にあることがあります。また、アトピー素因の人は幼小児期から乾燥性の皮膚を持っていることがあります。コロナが広がる状況下でよく見かけるのは、手洗いや消毒の励行による手の甲を中心とした乾皮症で、湿疹化しやすいために普段のスキンケアが大切です。治療、スキンケアは次回に述べます。