なるほど健康メモ

鼠径部ヘルニア(R5.3月号)

ヘルニアとは、臓器や組織の一部が、本来あるべきではないところに脱出・突出した状態を表す病名です。『膨らんだ若芽』を意味するギリシャ語“Hernios”から、『飛び出す』の意味を持つラテン語“Hernia”に派生し、現在の医学用語へと変化していきました。

鼠径部ヘルニアは、腸などがお腹の中から太ももの付け根のあたりへ押し出てきたため、鼠径部が膨らんでしまう病気であり、脱腸とも呼ばれます。この鼠径部ヘルニアは乳幼児期の頃に多い病気と思われがちですが、一方で高齢者にも発症します。加齢により、筋肉が痩せてきたり腹膜が緩んだりして、その隙間から腸などが飛び出してしまうためです。

鼠径部ヘルニア(R5.3月号)

お腹の一部が膨れるだけと思われる方もいますが、この飛び出してきた腸が隙間にはまり込んで戻らなくなると、血流が届かず腸が腐ってしまい、命に関わることがあるため注意が必要です。

残念ながら、鼠径部ヘルニアは自然治癒や薬で治ることはありません。また、ヘルニアベルト・バンドなども腸が飛び出してくるのを簡易的に抑えるだけで、治療にはなりません。現在、鼠径部ヘルニアの根治療法は手術だけです。その手術方法は、お腹の表面から行う方法と、腹腔鏡というカメラを使った方法の2種類がありますが、ともに、腸が飛び出してきた穴をメッシュで覆う治療を行います。

鼠径部ヘルニアの患者さんは多くいますが、その発症場所からか、仲間内でも話題に出にくいようです。1人で悩まず、病院で相談してみてください。