なるほど健康メモ

「うつ病」の類型(R5.10月号)

今日「うつ病」と診断されるケースが多くなっていますが、その内にはいろいろなタイプが含まれており、いささか混乱を生じているように見受けられます。

1975年(昭和50年)に笠原嘉と木村敏という2人の高名な精神科医よって作られた「笠原・木村分類」というものがあり、うつ病を6つの型に分類しています。ここではその中から代表的な2つの型を挙げます。

【第I型】メランコリー親和型に基づく性格反応型うつ病
【第III型】未熟依存型自信欠如的な性格に持続的な葛藤状態が加わって生じる葛藤反応型うつ病

「うつ病」の類型(R5.10月号)

第I型は、狭義のうつ病とも言うべきもので、一般にイメージされるのはこのタイプと考えられます。なお、メランコリー親和型とは、几帳面で他者への配慮を重んじ、一定の秩序内で安定が得られる性格傾向です。

第III型は、仕事以外の趣味などに関する興味や活動性が維持されることも多く、一般のうつ病イメージとは異なるかもしれません。

両型の間には、気分の日内変動・自責性の有無、睡眠障害のパターンなどにも差異が認められ、診立ての一助となります。第III型は笠原・木村分類のできた当時は、現在に比して受療行動につながることが少なく、受診しても神経症(ドイツ語で「ノイローゼ」)等と診断されることが多かった(いわゆる誤診ではありません)ものと推察されます。

これらの類型を区別せず、一括りにして「うつ病」となるように現在の診断基準ができあがっていることも混乱の一因でしょう。

以上、ご参考まで。