なるほど健康メモ
ちくのう症(副鼻腔炎)(R6.3月号)
鼻の機能の1つである嗅覚は、例えば食事を楽しむためにもとても大切です。それに加えて腐敗、有毒物質、火災、機器の故障などの異常を臭いで感知でき、危険回避の上でも重要な感覚です。野生動物にとっては餌、繁殖相手とその状態、捕食者の接近などを知る手段であり、嗅覚を失うと命取りとなります。
鼻に空気が通らないと臭いも感じません。通り道を鼻腔といい、その周りにある空洞を副鼻腔(ふくびくう)といいます。複雑な構造で個人差もかなりあります。ちくのう(蓄膿)症はここに膿がたまる病気です。風邪などで鼻炎になり抵抗力の弱った副鼻腔に細菌がすみつくと急性副鼻腔炎になります。副鼻腔に膿がたまり慢性化すると鼻茸(はなたけ) というポリープもできます。こうなると手術が必要になります。
内視鏡手術と治療薬の進歩でちくのう症は治せる病気となりました。しかし、手術をしても鼻茸の再発を繰り返す難治性の副鼻腔炎があります。主に好酸球性副鼻腔炎と言われ、近年その患者割合が増えてきました。副鼻腔炎では嗅覚障害が高頻度で起こります。
好酸球は白血球の一種で、この免疫細胞の“暴走”が原因で、免疫反応は止まることなく持続し増悪していきます。免疫の過剰反応としてはアレルギーがよく知られています。原因の異物がなくなればアレルギー反応は止まりますが、好酸球性副鼻腔炎に抗アレルギー薬は効果がなく、免疫を抑制する薬が必要になります。副作用が少なく効果的な治療薬が登場していますが、注射薬で高価な上に完治に至る目処も立たないので慎重に適応を決める必要があります。
人は鼻の機能を失っても直接は命に関わりませんが生活の質はかなり低下します。大切にしましょう。